Peter Duchin ピーター・デューチン / Child Of Mine

Hi-Fi-Record2013-07-02

レコード屋のはなし」その2


「親子鷹(2)」


レコード屋を親子で継ぐのは
どうやらなかなか難しそうなことを書いたけど
そういう例がないわけでもない。


東海岸のあるレコード屋では
親父の店の隣に息子が店を開けていて、
なんとその店では
親父の趣味よりずっと古い戦前のSP盤や蓄音機を扱っていたりする。


親父さんは
60年代、70年代の王道なロックやポップスが超得意だから
息子もちいさいころからそういうのを聞いてきて(聞かされてきて)
おなじような趣味に育つかと思いきや
そうはならなかった。


たぶん
多少の反発もあるだろうし、
親父の趣味はちょっと退屈だとも思ってるんだろう。


そのへんの事情は
別に音楽に限らないってことか。


親父の好きな(好きだった)ものを素直に認めることができるまで
どれだけ時間かかったっけ?
あれ? まだ言えてなかったっけ?


すくなくともこの親子は
おなじ“レコード”って土俵に立ってる分だけ
幸せだろうなって思う。


別の西海岸の店では
「息子はレコードのことはそんなに詳しくないけど
 ネット販売やツイッターでおれをすごく助けてくれるよ」って
言ってる店主もいた。


でも
息子さんたち
もうすこし気をつけといてほしい。


きみらの親父さん
そんじょそこらの図書館とか
Wikipediaが束になってかかっても敵わないくらい
音楽のこと
レコードのこと
よく知ってるんだから。


親父さんが引退してからじゃ遅い。
生きてるうちに拾える骨ってのがある。
気骨ってやつ。


若い友人たちでにぎわう
息子の店を横目に見ながら、
どうか
ぼくの大好きな店を
一代限りにしてしまわないでって思う。


もうちょっと
レコード屋の親子のことを考えてみる。(つづく)


松永良平