Faragher Brothers ファラガー・ブラザース / Faragher Brothers
ファンの間では、1975年から5年くらいがAORの当たり年ということになっている。
おっと思うアルバムは、確かにこのあたりの年度に集まっている、不思議な事に。
そのAOR。
AORとはこれだと言い切るのは難しいとしても、多くAORと呼ばれる音楽にはこんな傾向があるというポイントをいくつか挙げることは、可能だろう。
AORの聴衆は多くが男性。
男性歌手が失意を歌うメロディを、男性の聞き手が悦に入って聞く。
ゲイリー・ポートニートか、ゲイリー・ベンソンとか、クリス・モンタンとか。
「たまらん」とかつぶやいたりして。ビールを片手に、悶絶したりする。
男が男の音楽を聴いて泣くのだ。
それって不思議な光景ではありませんか?
この点は次にまた、ということにして。
白人青年バンドが、黒人音楽を演る。
これもAORに多く見られるポイントだろう。
例えばこのファラガー・ブラザース。
カーティス・メイフィールドの一曲を除いて、ほかはすべてメンバーによる自作だ。
カーティス作の「It's All Right」が登場するのは、A面の3曲目。この前後の曲の流れに何らの違和感も無い。
メンバー作品が、ソウル・ミュージックのフォームを踏んでいるからだろうと思う。
白人青年層が、黒人音楽に近づいて行ったプロセスの過程で産み落とされた音楽がAOR。そうして考えてみると1975年から80年あたりにAORの傑作が集まっている事の意味も、また改めて見えてくるように思う。
80年代に入ると、黒人音楽と白人音楽の蜜月時代は終わり、距離を置いた併存へと向かい始めるのだ。(大江田)