The Ventures ヴェンチャーズ / Joy

Hi-Fi-Record2006-09-28

アメリカに初めて買付に行ったとき、
初めて買ったアルバムはアポロ100の「ジョイ」だった。


そのとき大江田さんは「あ、それ売れないんだけど、
そういうものを買付して実感として体得するのも大事なんだよな」と
心で思って、だまっていたのだという。


ぼくはと言えば、別にムーグ(モーグ)ものに執心だったわけでもなくて、
それを手にした理由はただひとつ。
ポール・トーマス・アンダーソンの映画「ブギー・ナイツ」を
出発前に見ていたからだった。


ポルノ男優の道を歩む主人公の
うたかたの日々をモンタージュ的に構成したシーンのバックに
アポロ100の「ジョイ」、
すなわちムーグ版のバッハ「主よ人の望みの喜びよ(カンカータ 第147 番)」が流れる。


そのシーンが頭から離れなくて、
ついつい手を伸ばしてしまったのだった。
結局、そのアルバムは結構時間がかかったが売れた。


あそこでホモでデブのしょうもない男を演じていた
フィリップ・シーモア・ホフマンは今やオスカー主演賞になってしまったが、
ぼくが好きだったのはアメリカの石立鉄男ことジョン・C・ライリー
「ブギー・ナイツ」では主人公の相棒を務めている。
アンダーソン監督の次作「マグノリア」で彼が扮する警官のエピソードは大大大好きだ。


例によって話がそれそうなので、とっとと戻る。
アポロ100のアルバムは今ハイファイには無い。
なので、そのカヴァーを収録しているヴェンチャーズ盤を載せておくとしよう。
バッハのカヴァーのカヴァーだから孫カヴァーというところ。


このアルバムも、全曲クラシックをテーマにしていて
ゴージャスを目指しながらユニークに落ち着くというあたりが
なかなか憎めない出来になっている。(松永)


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