The Ventures ヴェンチャーズ / Joy
アメリカに初めて買付に行ったとき、
初めて買ったアルバムはアポロ100の「ジョイ」だった。
そのとき大江田さんは「あ、それ売れないんだけど、
そういうものを買付して実感として体得するのも大事なんだよな」と
心で思って、だまっていたのだという。
ぼくはと言えば、別にムーグ(モーグ)ものに執心だったわけでもなくて、
それを手にした理由はただひとつ。
ポール・トーマス・アンダーソンの映画「ブギー・ナイツ」を
出発前に見ていたからだった。
ポルノ男優の道を歩む主人公の
うたかたの日々をモンタージュ的に構成したシーンのバックに
アポロ100の「ジョイ」、
すなわちムーグ版のバッハ「主よ人の望みの喜びよ(カンカータ 第147 番)」が流れる。
そのシーンが頭から離れなくて、
ついつい手を伸ばしてしまったのだった。
結局、そのアルバムは結構時間がかかったが売れた。
あそこでホモでデブのしょうもない男を演じていた
フィリップ・シーモア・ホフマンは今やオスカー主演賞になってしまったが、
ぼくが好きだったのはアメリカの石立鉄男ことジョン・C・ライリー。
「ブギー・ナイツ」では主人公の相棒を務めている。
アンダーソン監督の次作「マグノリア」で彼が扮する警官のエピソードは大大大好きだ。
例によって話がそれそうなので、とっとと戻る。
アポロ100のアルバムは今ハイファイには無い。
なので、そのカヴァーを収録しているヴェンチャーズ盤を載せておくとしよう。
バッハのカヴァーのカヴァーだから孫カヴァーというところ。
このアルバムも、全曲クラシックをテーマにしていて
ゴージャスを目指しながらユニークに落ち着くというあたりが
なかなか憎めない出来になっている。(松永)