Art Garfunkel アート・ガーファンクル / Watermark

Hi-Fi-Record2006-11-02

 伝記を読んで、ポール・サイモンのブリルビルディング時代のアーティへの仕打ちを知ってしまったからかもしれないけれども、ぼくにはどこかアーティに肩入れしたい気持ちがある。アーティの歌声にシンパシーを感じる。
 どうしてあなたは、こんなに濁り無く歌を歌えるのですか?と聞いてみたくなるのは、彼のこういうアルバムを聴いているときだ。


 アーティも僕らと同じような心の闇を持っていることは、彼が犯してしまった過ちを見ればわかる。潔白に生きてきた人の音楽だけが美しいと限らないことは、ある程度の年齢に達してくれば、自然にわかってくることだろう。


 「明日に架ける橋」のボーカルをアーティに取らせるんじゃなかったと、ポールが悔やんだという逸話が残っている。アーティの声が持つ力をよくわかっていたからこそ、レコーディングの際にポールは彼に歌わせることを思いついたのだろう。ところが想像以上に「明日に架ける橋」が売れてしまった。時代を語る一曲に数えられるほどの曲になった。だったら作者の自分が歌えば良かったと、ポールは後になって悔いたという。
 ポールがそう言っていることを耳にしたアーティは、どう思ったことだろう。



 サイモン&ガーファンクル解散後に初めてアーティが全米ツアーを行ったとき、デュオ時代のレパートリーを歌う際のポール役をまかされたのは、ママ・キャスの妹、レア・カンケルだった。
 もしも二人のデュエットの映像が残っていたら、ぜひとも見てみたい。(大江田信)


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