Pat Webb パット・ウェッブ / Guitar

Hi-Fi-Record2006-11-30

 パット・ウェッブの名前は、プレステッジよりCharlotte Daniels And Pat Webb名義で発表された同名のアルバムと、本作でしか見たことが無い。その他にどうした活動をしたのか、よくわからない。プレステッジのアルバムでは、相方のシャーロット・ダニエルズと二人で渋いフォークやカントリー・ブルースを演奏している。フォークの伝統に素直に添っているというか、やや真面目で堅い印象を感じる。
 それが数年後の本作になるとがらっと印象が変わる。スリー・フィンガーのカントリーブルース・タイプのギターの技法を軸におきながら、スパニッシュギター風に演じたり、ドローンを響かせながらモーダルなフレーズを繰り返したり、クラシック・ギターのような技法を見せつつ音響的に加工したり、ごく率直なカントリー・ブルースを演奏したりと、多彩な振れ幅を見せるインストルメンタル・アルバムだ。


 裏ジャケには「Blues In B」とか「Variation In C」、「Blues In A」などといったタイトルが並んでいて、いかにも収録を終えてからいざレコードにする段になった考えたようなふしもある。カントリー・ブルースに根ざしていること、そして即興性(思いつき?)や選曲、音楽構成を含めて、ジョン・フェイの方法とよく似ている。パットのギター演奏は、フェイの影響下にあると言えるのかも知れない。ただしちょっとフェイに比べると全体のトーンがやや明るめではある。確かめようもないので、想像の域を出ないけれども。



 スリー・フィンガーのギター演奏に、自身の心情を映し込むという音楽が生まれてきたのは、おそらく50年代の半ば頃からだろう。スリー・フィンガーを学んだ若き白人演奏家達が、思い思いに幅広く音楽を発展させ始めてからのことと思う。
 タカタカと響くギターの音色に、ディープで苦い情感が混ざっている。おそらくPat Webbも、そうしたギター音楽の先行者の一人だったのだろう。
 唯一収録されたボーカル曲「Sitting On The Top Of The World」の凄みも、おもしろい。(大江田信)



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