Julie London / The Wonderful World Of Julie London

Hi-Fi-Record2007-01-08

アメリカの中古レコード屋に行って気が付くこと。
そのひとつに、日本では
いわゆる「ジャズ・ヴォーカル」と分類されている人たちが
あちらではさらに2つに分かれているという事実がある。


男性? 女性?


いえいえ。
それは「ポップ・ヴォーカル」と「ジャズ・ヴォーカル」。


この違いについて、アメリカ人のレコード好きに訊ねたことがある。
答えはこうだった。


「それは、メロディをフェイクしたりインプロヴァイズしたりしているか、
していないかの違いだろうね」


なるほど!
思わず膝を打った。


「フェイク」とはメロディの上げ下げで出す抑揚を指し、
「インプロヴァイズ」とは、ズバリ即興的なスキャットなどを指す。


そして同時に日本では「ジャズ・ヴォーカル」と分類されているヴォーカリスト
必ずしも欧米ではそうとは言われていないことがわかってきた。


たとえばジュリー・ロンドン
彼女は欧米では「ポップ・ヴォーカリスト」だが、
日本では「ジャズ・ヴォーカリスト」扱いされる場合が多い。
しかし、独特の沈み込むような色気を持つ彼女の歌い方には
多少のフェイクはあるものの、原曲のメロディにはとても忠実だ。


つまり、ヴォーカルの世界に限って言えば、
欧米ではジャズとは歌い方、唱法であるのに対し、
日本ではジャズを雰囲気(美人だとか、クールだとか)で判断する傾向があるということだ。


それがわかったとき、どっちが正しいとかではなくて、
日米でファンに受けるレコードの違いとか、
そういうことの一端がずいぶんクリアーに見えた気がした。


1960年代も半ばを過ぎると、
ジャズ・ヴォーカリストも同時代のポップスを
レパートリーに採り上げるようになり、
ジャズとポップの境界線はおのずとおぼろげになってゆくのだけどね。


このアルバムでジュリー・ロンドン
「In The Still Of The Night」を
「Our Day Will Come」のアレンジで歌っている。
それも、そういう時代の産物ではあるのだが、
とても好きなカヴァーだ。(松永良平


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