Bert Kaempfert And His Orchestra / That Happy Feeling

Hi-Fi-Record2007-01-10

 1月8日のブログで松永クンが、ジャズ・ボーカルとポップ・ボーカルの違いについて延べている。
 これはとっても興味深い着眼点だ。読んでいて、ものすごく興奮した。
 というのもポップス・オーケストラにも、ジャズ・ボーカルとポップ・ボーカルの違いにも似たことがある、それが最近になってわかってきたからだ。



 例えばパーシー・フェイスの場合は、メロディをフェイクさせたり、アドリヴさせたりしない。
 メロディを引き立てるオーケストレーションに努力を傾注し、いかにメロディを気持ちよく、あるいは華やかに、あるいは叙情豊かに歌わせるかに腐心している。



 ベルト・ケンプフェルトの本アルバムに収録の「スインギン・サファリ」では、トランペット・プレイヤーのフレッド・モックが、メロディに軽妙なアドリヴを施している。
 ベルト・ケンプフェルトの音楽的ルーツは、30〜40年代アメリカのスイング期のビックバンド・オーケストラにある。ジャズを下敷きにした音楽作りの発想が、彼のサウンドにアドリヴを持ち込ませているのだろう。フレッド・モックという音楽パートナーとも言うべき演奏家を得たからこそ、それが可能になったという面もあるに違いない。
 考えてみればストリングス・セクションの全員が揃って同じメロディにアドリヴする、なんてことはそもそもあり得ない。アドリヴとは、演奏家の個人的な営みだ。



 フランスのオーケストラ・リーダーで編曲指揮のカラベリも、演奏家にパートを任せソロ演奏させることがあるし、「ある愛の詩」ではほかならぬ自分自身が素晴らしいピアノ・ソロを弾いている。まるでコンチェルトのように編曲されている名曲の名演だ。この場合はクラシックにおけるアドリヴ、すなわちカデンツァとでも言うべき発想なのかも知れない。(大江田信)


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