V.A. / A Prairie Home Companion Anniversary Album

Hi-Fi-Record2007-01-11

 土曜の午後3時から5時、日曜の午前中10時から12時に、全米850を超えるパブリック・ラジオ系列局から放送されている音楽番組「プレーリー・ホーム・コンパニオン(A Prairie Home Companion)」。1969年に始まり、今でも続いている長寿番組だ。



 番組の様子を収録したこの2枚組レコードを聴いていたら、店内に入ってきた若いアメリカ人青年ライアンが(ミネソタ生まれのミネソタ育ち。このときはミネソタ大学に在学中だった)、「この番組は子供の頃から、ずっと聞いていたよ」と達者な日本語で声をかけてくれたことがある。その声の響きには懐かしさがこもっていて、まるで少年時代の自室でラジオを聴く気分が一気に甦ってきたかのような口ぶりだった。
 なるほど、そういう思いを残す番組なのかと記憶に残った。
 ついこの間の買付の際に、街の郵便局で声をかけてくれた日本の高校での英語教師経験を持つ方も、この番組が好きだと語っていて、その声にも親しみがこもっていた。
 プレーリー・ホーム・コンパニオンに出演することは、アーチストにとって大変に名誉なことのようで、カフェ・アコーディオン・オーケストラのダン・ニュートンと会ったときも、「先週、番組に出たんだよ」と嬉しそうに語っていた。



 このプレーリー・ホーム・コンパニオンをベースにした映画が、アメリカで公開された。邦題は「今宵、フィッツジェラルド劇場で」。この春、日本でも全国公開されるという。
 ロバート・アルトマン監督の遺作である。




 どうした偶然か、かつてテレビ放送された「プレーリー・ホーム・コンパニオン」のとある回が、パブリック・テレビで再放送され、これを前回の買付の際に滞在先のモーテルで見ることが出来た。
 帰国する飛行機の中では、映画の方もいち早く見ることが出来た。これで実際の番組の様子と、映画で描かれる様子とを、数日をおかずに両方見たことになる。幸運だった。




 映画は、ラジオの公開放送の実際の表裏と、生と死をめぐる聖書以来の物語とを掛け合わせながらセミ・ドキュメンタリー風に構成した内容だが、なにしろ音楽がふんだんに流れてくる。アメリカのフォーク系音楽に興味がある方だったら、まずご覧になった方が良い。ミネソタシンガー・ソングライター好きの方には、マストの作品だろう。パット・ドナヒューやロビン&リンダ・ウィリアムスやら、ああ、なるほどという顔が登場し、演奏する。




 数多い達者な役者に混ざって、実際の番組でも司会をしているギャリソン・キーラーが、その司会役で登場している。1963年、ミネソタ大学の学生だった彼が、キャンパス・ラジオに関わって以来、それからずっとラジオの現場に携わり、今ではこの人気番組のホストとなった。180センチをこえる長身で、いかにも人の良さそうな出で立ちの彼が、いつもの番組を進行するような様子で、重要な役回りを演じている。
 なんと驚いたことに、主演女優のメリル・ストリープと、ギャリソン・キーラーは、映画の終盤でキス・シーンを演じるのだった。これには、びっくり。同じく機内映画を見ていた松永クンも同様だったようだ。
 映画の台本には、ギャリソンも関わっていたようで、これがなによりのギャラじゃないのかな、なんて会話を二人で交わしてしまった。



 それにしてもギャリソン・キーラーの人柄が、いい。「プレーリー・ホーム・コンパニオン」のことを好きだという人の気持ちの何割かは、ギャリソン・キーラーを好きだと問わず語りに語っているのではないかと思う。(大江田信)



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