Dizzy Gillespie ディジー・ガレスピー / Jambo Caribe
ジャケットを開くなんて、
そんな贅沢な。
1960年代も半ばを迎えるまで、
LPレコードのジャケットは一枚に限るという常識があった。
表はキレイにして、裏は解説。
それだけで事足りる。
あとは音楽が鳴っていればよい。
その常識を変えたのはロックの世界で
ビートルズの「サージェント・ペパーズ」や
ディランの「ブロンド・オン・ブロンド」や
マザーズの「フリーク・アウト」だということになっている。
だが、実際にはダブル・ジャケットというアートフォームは
その少し前から始まっている。
ジャズの世界で、
それを豊かな美意識で追求したのがライムライト(Limelight)というレーベル。
ライムライトのアートワークの面白いのは
見開きの内側を平面と考えず、
両翼30センチの幅を持つ空間の拡がりと考えたこと。
ブックレットを貼り付けるなんて序の口で
飛び出す絵本的な仕掛けも多数行われている。
その始まりは63〜4年頃。
紙の芸術で音にも発想の飛躍を与えるという取り組みでは
ロックの遙か先を行っていた。
ディジー・ガレスピーがカリプソに取り組んだこのアルバムも、
当然のように見開きジャケット。
飛び出す仕掛けはないけれど、
かわいらしいイラスト満載のブックレットが付いている。
日本盤でこのLPが出たときは、
そのブックレットは無かった。
だから、オリジナル盤を初めて見たとき、
飛び出す絵本ぐらいうれしかったのを覚えている。
ジャケットを開くなんて。
しかもその中に、素敵な仕掛けがあるなんて。
この先の未来に、
そういう“瓢箪から駒”な感激って、
果たして待ち受けているんだろうか?(松永良平)