Prince Kawohi and the Luau Boys / At The Luau

Hi-Fi-Record2007-01-13

 実際に行ってみると気がつくことだけれども、ハワイのワイキキではホテルやレストランなどで、音楽がさりげなく生演奏されている。たとえば夕暮れのヒルトン・ホテルの中庭を歩いていると、ハワイアンや口当たりのやわらかいメロディを、日替わりで誰かが演奏している。そして、その水準が高いことに驚かされてしまう。
 ホノルル市内にはブレイズデル・センター・コンサートホールという立派な大ホールもあり、そこではジャズやクラシックのコンサートも開かれているけれども、出演者にはメインランドからやってきたアーチストが多く、ロコのアーチストが登場するのは特別なこと。
 ディナー・タイムのショーや、週末のレストランの夕食時や、ホテルのラウンジや、カフェの片隅でハワイアンは演奏されてきた。必ずしも音楽を聴くために用意された場所ではない。これはずっと昔から、そうだった。



 50年代末のハワイアン・ミュージックを伝えるプリンス・カオヒとルアウ・ボーイズのアルバム。ジャズと交配したイキイキと楽しくスインギーな音楽が流れ出してくる。ボーカルがふんだんに活かされている。バックの演奏もまろやかな響きで、ボーカルのやわらかい表情と響きあう。
 同時代、あるいはもうちょっと前の40年代、ハワイ出身バンドの音楽がメインランドで活動する際に、リズムを強調しインストルメンタル・パートを多く含んだダンス・バンド的演奏になっているのと比べると、プリンス・カオヒの本作にはボーカルを中心にしたホテルのハワイアン・ショーの趣がある。



 ソロ・ボーカルのゆったりとした響き、コーラスの巧みさ、ユーモラスな曲を織り交ぜる組み立て、フラの楽しさを引き出す選曲、プレイヤーの技を光らせるインストルメンタルなどなど。おそらくショーのレパートリーが、そのまま収録曲になっているのだろう。
 アルバムを聴くうちに、ステージ・ショーが目前に見えてくるような気持ちになる。(大江田信)


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