Chico Hamilton チコ・ハミルトン / The Three Faces Of Chico Hamil

Hi-Fi-Record2007-01-22

天は二物を与えず、と俗に言う。
それなら、おれは三物あるぜ、と
チコ・ハミルトンは言ってみた。
まあ、そんなところか。


気鋭のジャズ・ドラマーでソロはスリリング、
前衛的なアンサンブルの組み方にも長け、
歌もうま、うま、うま……うまくない。


何だ! 三段オチかよ!


しかし、ぼくは常々「二」より「三」の方を買っている。


二枚目とはもともと芝居で主役を張るいい男が
出演表で二番目に置かれるから言われるようになった言葉で、
主役を助ける役者が三番目に来るので
三枚目はおどけ者の代名詞のようになった。
だが、三枚目がヒトクセないと芝居は締まらない。


それに二面性、二枚舌……と、
「二」にはネガティヴなイメージもつきまとう。
裏と表しか無いんじゃ、どっちかに倒れるしかないじゃん。


その点、「三」の性格は見逃せない。
なにしろ、二角形ってのは存在しない。「三」から図形は始まっている。
三人寄れば文殊の知恵。
三度目の正直。
ぼくらが暮らすこの世界も三次元。


「三」に懸けられるバランサーとしての役割は大きいのだ。


だから、チコ・ハミルトンの突出した二つの才能が
いたずらに暴走しないようにするために
三個目の、愛嬌で聴かせる歌が必要だ。
とか言ったら、本人には怒られるだろう。


え? 許してくれる?
仏の顔も三度まで、か。なるほどねー。(松永良平


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