Jacqueline Francois ジャクリーヌ・フランソワ / Vive La Francois
ふだんからシャンソンのレコードを扱っている訳ではない。でもこういうレコードと出会うと、無性に日本に連れて帰りたくなる。
ジャクリーヌ・フランソワ。シャンソン・ファンの方達の間でどのように評価されているのかは知らないのだけれども、彼女のストレートで音程のいいボーカルと、やや素っ気ないその表情が昔から好きだった。
彼女のボーカルは、いかにも小さなシャンソニエ向きというか、小劇場向きというか。決して演劇的でも、大仰でも無い。それがいい。
このレコードではミシェル・ルグランのオーケストラをバックにして、ふくよかな歌唱を披露している。ボーカルとオーケストラとが同録だった時代のこと、ムッシュ・ルグランが、ボーカルに絡む対位法的な旋律をストリングスに弾かせたりしている所を見ると、彼女は実力を買われていたのだろう。
1922年生まれというから、このアルバムが発表された頃は、おそらく30代の後半くらいか。
セーヌ河を背景に、毛皮のコートを着て、首を少し曲げたポーズで、こちらを見つめている。髪はショートカット。これくらい短めの髪型の女性に、ぼくはえらく弱い。
さっきからその清楚なボーカルを聴きながら、うっとりしている。チャップリンの「スマイル」のフランス語版に、殺られてしまったし。「ケ・セラ・セラ」も素晴らしい。マイクの前にグッと近づいて来て歌う時の声を聴くと、なぜか胃の下のあたりがムズムズして、ドキドキする。(大江田信)