Summit サミット / The Tuna Boat Blues

Hi-Fi-Record2007-05-03

 レコードを買い始めたのが1960年代後半の中学生くらいから。そのころにはそんな習慣が一般的にはなかったのか、それともまだ子供だったので小心だったのか、いずれにしても中古レコード屋さんで気軽に試聴させてもらうことはまずなかった。
 世に言うところの聴くべきレコードは、ラジオやらなにやらでなるべく済ませて、手元に置いておくならば、願わくば誰も知らない自分だけの楽しみのレコードがいい。そんな風に思い始めたぼくは、レコード屋に通っては、買い方のコツを学んだ。


 まずは邦盤のレコードのライナーを読む。歌詞カードと一緒に表裏に印刷してあるライナーを、読みやすく裏ジャケ部分に抜き出して梱包していた新宿のオザワ。これは助かる。ここに入り浸った。
 そうするうちに熱が高じて洋盤を買うようになる。要するにジャケ買いの道に入ったのだ。


 自分の望む音楽を入手するための自分なりの共通項をジャケットに探した。自由な雰囲気があること、デザインがいいこと、バンドのメンバーに上下関係が無いように写真に写っていること、そんなことを無意識に気にしながらレコードを選んでいた気がする。
 ジャケ買い道に進んでごくごく最初に入手したのが、フィフス・アベニュー・バンドだったものだから、ぼくは自信を得た。なんの事前知識もなく、カンで抜いた1枚だった。
 ああ、あれも買ったなあ、これも買ったなあと思い出すうちに、もちろん失敗もしていて、どうして買っちゃったんだろうと思い返すレコードもある。


 このサミットのアルバム。この時期の僕だったら、間違いなく買っていたか、買う候補の一枚に並べて、悩んでいたに違いない。
 そういうジャケットなのだ。
 すっきりとして造形的なデザイン。
 裏ジャケには女性が一人、男性が二人。彼女の髪が肩までの長さなのもいい。
 

 ジャケットを眺め、針をそっと盤に置いて、そして流れ出すサウンドを聴いていると、なんだかレコードを買い始めた時期の事を思い出して、ふと、ほの甘い気持ちになる。そんな一枚。(大江田信)
 


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