Burl Ives バール・アイヴス / The Times They Are A Changin’
バール・アイヴスには、アルバムがイッパイある。
1930年代の早くからフォークを歌い、その後にトレンドとなるフォークに併走するように活動を続け、60年代にはカントリー・タイプのヒット曲を放った人だ。70年代に入るとテレビショーの出演が増え、柔和な人柄で愛された。
いろんなタイプのアルバムをリリースしているが、僕はこれが一番好きだ。
ボブ・ディランのアルバム「追憶のハイウェイ 61」を手がけたボブ・ジョンストンの制作によるプロダクションで、ボブ・ディラン、ポール・サイモン、ジミー・ウェッブなどのフォーク・ロック作品を、丁寧な歌唱で歌っている。なるほどなあと手に取り、いざ聴いてみて思いがけない発見があったからだ。
アルバム・タイトルにもなっているディランの「時代は変わる」には、変わり始めている時代の変化に口を挟まず、見守りなさいと、親の世代に歌いかけている詩がある。
バール・アイヴスは、その親の世代だ。
バール・アイヴスが歌うと、ディランをはじめとする世代への共感をやや離れた場所から表明しつつ、子供達の世代の変化に動揺を見せている親の世代に対して、しばらくそっとしておこうと諭しているように聞こえる。
「時代は変わる」という歌の、新しい解釈を聴いたような気がした。
それからこのアルバムへの興味がぐっと深まったのだった。(大江田信)