Joanie Sommers ジョニー・ソマーズ / Come Alive!
たしか10年ほど前だったか、90年代に彼女がロスの小さなラウンジで歌っているライヴを収録しているCDを入手して、それとなく繰り返し聴いていたことがあった。
あるとき旧ハイファイ店内でかけていたときのこと、店に入って見えたお客様が、これはだれ ?と仰った。ジョニー・ソマーズですよとこたえると、ふ〜ん、なるほどなあとつぶやかれた。
その「なるほどなあ」という気分がよくわかる気がして、思わず「そうなんですよ」とお応えした。
どうして「なるほどなあ」なのかということを説明するとすれば、たぶんこういうことだろうと思う。
我々が知るところのジョニー・ソマーズは、もちろん「ワン・ボーイ」や「内気なジョニー」のティーンエイジャー・タイプのヒット・シングルを放った彼女であり、そして同時にローリンド・アルメイダのギターをバックにボサノヴァを軽妙に歌う彼女でもあり、こうしてモート・ガーソン指揮するところのオーケストラで、ミディアム・ハイのテンポにセットされたキュートな4ビートの「ワンダフル・デイ」を歌う彼女だ。
つまり華やかでショウビズな彼女である。
そのジョニー・ソマーズが、こんなにつつましい場所で歌っているの?というのがまず最初の驚き。そしてその次に彼女にちっとも落ちぶれた感が無いことに驚くのだ。
彼女は自分の音楽を素直に表明していた。バックはピアノ・トリオ。さわやかに堂々としていた。
周囲の状況にお構いなしという姿勢ではない。会場に集ってくれている聴衆に丁寧に歌を届けていた。
そうするうちに彼女の中で未だ音楽が終わってしまっていないことに、僕等は気付かされるのである。
だから「なるほどなあ」というのは、「なるほど、いつまでも歌が好きな人なんだなあ」という言葉にニュアンスが近い。
歌うならチャンと歌うのよ、私は、そんな気持ちの張りが聞こえる声。カワイイお婆ちゃまになっているんだろうな、たぶん少しガンコな。
どこかですれ違う機会があれば、ライヴに立ち寄りたい。今年、彼女は67歳になる。(大江田信)