David Rose デヴィッド・ローズ / Holiday For Strings
いかにも日曜日の気分のするメロディ「ホリデー・フォー・ストリングス」。
太陽が差し込む季候もいい午前中、のんびりとした気分の休日。
サンドイッチと紅茶ポットとミルクを横に、芝生にひっくり返っていたい。
そんな時にどこからともなく聞こえてきたら、どれほど幸せな気持ちになるだろう。
そんな気分を味わいたくて、その昔、イギリスでピクニック・バスケットを買ってきた。籐で編まれたカゴに、サンドイッチ入れと紅茶を入れる魔法瓶と、ミルク入れ。そして砂糖やらなにやらを詰めるちょっとしたタッパー。サンドイッチを盛りつける大きなお皿。
セットの主人公は紅茶を飲むカップとソーサーだ。これが本格的な陶器製で、5人分がセットで用意されている。細やかな細工をしたスプーンのセットもついていた。
これが家族に不評だったこと。
なにしろ本格的すぎて、重いのなんの。
どこかの公園に車をとめて、敷物を敷くことができる芝生まで歩く間に、両手が疲れちゃう。
子供が持つなんて無理。なのでいつもお父さんのお仕事になったのだが、それも数回のことで終わってしまったように思う。
イギリスの家庭における幸せのひとつ。日曜日に家族でサンドイッチを持ってピクニックに行くこと。
憧れてピクニック・バスケットを買ってきたものの、数回、陽の目を見た後に、家の何処かに仕舞われた。今はどこにあるのだろう?
「ホリディ・フォー・ストリングス」の作曲者、デヴィッド・ローズの音楽を聴いていると、ふと家のどこかにあるはずのこの藤製のバスケットを思い出す。
弦のピチカートのサウンドに、ピクニックな気分の響きがするからだ。
それにしても、どうしてこんなにせわしなくストリングスが動き回る忙しい曲のタイトルが「弦楽器のための休日」なのだろう。
どうしてもよくわからないのだが。(大江田信)
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