Frumox フルモックス / Frumox

Hi-Fi-Record2007-09-01

 ハイファイのサイトではこのアルバムを紹介するのに、今はなき渋谷のロック喫茶、ブラック・ホークのことを引いている。
 ブラックホークミニコミ的な雑誌「Small Town Talk」を発行していて、その最終刊第11号では99枚のレコードを紹介していた。そこにフルモックスのアルバムが掲載されていた訳ではないのだが、アルバム全体が醸し出す音がブラック・ホークの時代を思い起こさせる気がして、紹介のコメントを書いた。



 ブラック・ホークと松平維秋さんについてをまとめた『ブラック・ホーク伝説』の刊行が10月に予定されている。
 どのような仕上がりになるのか、としても楽しみにしている一冊だ。可能な限り松平さんが執筆された文章が掲載されることを望みたい。なにしろ生前書かれた文章には、今読み返しても思わず襟を正したくなるようなものが多い。音楽と自身を重ね合わせながら、常に誠実な文章を書かれていたし、その丁寧な文体に知的な思考の歩みが映し込まれている。こうやって音楽を考えなければと、すぐに結論を出したがるせっかちな僕は思わず自戒する羽目になる。



 もしかするとフルモックスに対して僕が注いでしまう想いは、ひいき目にすぎるかもしれない。
 冒頭の食器がふれあい声高な声が交差する、田舎町の酒場を思わせる冒頭のガヤ・ノイズにも、心を奪われていたことを思い出す。
 情報量が少なく、輸入盤が考えられないほどに貴重で、一枚一枚を繰り返し聞いていた、あの時代の空気が濃厚に張り付いているレコードなのだ。(大江田 信)


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