Rachel Faro レイチェル・ファロー / 2
数日前の朝、
出がけに駅の近所の中古レコード屋さんに入った。
その店は朝10時からやっているので、
ハイファイへの行きがけに
寄れるときは寄るようにしている。
その日、
いきなり「ウィチタイ・トゥ」が店内で流れた。
「ウィチタイ・トゥ」とは
サックス奏者のジム・ペッパーが書いた不思議な曲で
ハーパース・ビザールやエヴリシング・イズ・エヴリシングが
カヴァーしたヴァージョンが人気がある。
ネイティヴ・アメリカンの言葉から来ているのであろう
おまじないのような言葉「ウィチタイ・トゥ」を繰り返し
浮遊しながらゆっくりと曲は続いてゆく。
流れていたのはジム・ペッパーのオリジナルだった。
結構レアである。
女性の店員さんが
レジ周りを片付けながら、その曲を聴いていた。
何というか、
その眺めがとてもよかった。
この曲は、どのヴァージョンにもハズレが無い。
時間の流れが心地よく狂う。
だから言えなかったのだ。
「今かかっているレコードをください」と!
その代わり、
ハイファイに今ある唯一の「ウィチタイ・トゥ」を聴く。
カナダの女性シンガー、
レイチェル・ファローのセカンドである。
この曲が流れ出すと、
時間の流れが、やっぱり不意に遅くなる。(松永良平)