Quincy Jones クインシー・ジョーンズ / Sounds...
新宿に最初に出来たタワーレコードは
今の場所ではなくて
新宿武蔵野館(映画館)の入ったビルの2Fだった。
ワンフロアをぶち抜いた広さは
80年代末の当時、日本最大と言われていた。
それを抜いたのが新宿丸井の地下に出来た
ヴァージン・メガストア。
渋谷のタワーがビルになる、
もう少し前の話だ。
話は戻って、その最初の新宿タワレコで、
このアルバムから
「Tell Me A Bedtime Story」が大音量で流れた。
ハービー・ハンコックの原曲は
ちょっとリリカルなピアノの小品という感じだが、
クインシーはそれを大胆に拡大解釈。
ゆったりとしたファンク・リズムに
ストリングスがうねうねと舞う
一大オーケストラル・ナンバーに仕立て上げてしまった。
じわじわと這い上がり、
じらしてじらして
やがて
らせんのように舞い上がる。
この指揮棒は気持ちよかろう。
しかもハービー・ハンコックに
ここでエレピを弾かせるという粋なキャスティング。
その7分弱の間、時間が止まった。
息も止まった。
そのときはCDでのプレイだったが、
このアルバムはアナログの方に軍配を挙げたい。
音の抜け、広がり、
そしてそれを支える真ん中の虚空に
アナログ盤にしかないしたたかな踏ん張りを感じるのだ。(松永良平)