James Taylor ジェームス・テイラー / Dad Loves His Work
“追憶”という字の“憶”の字を当てて
「憶い出の街」という邦題をこさえたのは
いったい誰だろう?
巧い、と思う。
単なる思い出よりも、
もっと記憶の奥に手を突っ込んで
ちょっと痛みをともないながらも
思い出さずにはいられない、
そんな“おもいで”を絶妙に演出している。
ジェームス・テイラーにしてはちょっと甘すぎるかなと
思ってしまうこの曲。
ぼくが中学一年生のときにヒットした。
デュエット相手のJ・D・サウザーについてどころか、
JTそのひとのことも何ひとつ知らなかったが、
この曲のことはすごく好きになった。
当時、ぼくは家から40分ほど離れた街にあった
英語塾に週一回通い始めていて、
夕暮れのたんぼ道をえっちらほっちらと
自転車を漕いでいた。
そのときに
この曲をよく口ずさんでいた記憶がある。
もちろん「昔彼女と住んでいた街なんだ」という
歌詞だったとは夢にも思わず。
いつの間にか年齢だけは
「昔、よく通ってた街なんだ」と
言えるくらいになってしまった。(松永良平)