Chet Atkins チェット・アトキンス / Down Home

Hi-Fi-Record2007-10-24

 もう随分前のことになるけれども、レコード会社に勤務して、制作を担当していたことがあった。
 とあるシンガーのシングル曲のアレンジを、萩田光男さんにお願いしたことがある。
 大変に苦労され、レコーディングのスタジオには時間ギリギリになって到着された。
 その努力の様がとてもよくわかったのは、32小節だったか、64小節だったか、詳細は忘れたけれども、イントロ部分の編曲に、渾身の力が込められていたからだ。


 編曲家がその楽曲の何たるかを飲み込んで、そして自分の音楽の時間として吐き出すのは、まずイントロだと言うことなのだろうか。
 ギュッと握りつぶして、ガッと掌を開いているような音の連なりに、大変にびっくりした。


 そのときのことを、このアルバムを聴いていて、思い出した。
 というのも聴いていて小粋なイントロにふっと耳がいったからだ。
 一工夫が加えられていて、おやっと思わされる。耳をそばだてさせるというよりも、軽い前菜のような感じ。
 なかにはイントロがなくて、すぐにヴァースに入る曲もある。気が付くとああ、ヴァースだったんだとおもう。イントロのような、本編のような。
 イントロってなんなのだろう、どういう役目を持っているのだろうと思いながら、もう二回り目を聴いている。(大江田信)


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