Sammy Davis Jr. サミー・デイヴィス・ジュニア / Now

Hi-Fi-Record2007-11-21

サミー・デイヴィス・ジュニアの自伝
「ミスター・ワンダフル」(文藝春秋)を読んでいる。


最初の自伝「Yes I Can」(本邦未訳)、
映画好きで知られる彼の思い出話をまとめた
「ハリウッドをカバンにつめて」(早川書房)に続く
三冊目にして生涯最後の著作だ。


テーマそのものは
自身の人生と
アメリカ社会に根深く横たわる黒人問題を
ダブらせながら進行するシリアスなもの。


興味深く読んだ。


その中で、
莫大な浪費と借財を精算するために
サミーがリプリーズ/ワーナーを離れて
モータウンと契約する話が出て来る。


ブラッド・スウェット&ティアーズや
ローラ・ニーロを歌った
「サムシング・フォー・エヴリワン」がそれ。


実はこのとき
2週間のセッションで
アルバム2枚分が録音されていたのだ。


しかし、アルバムの売れ行きが不振だったため
モータウンは契約の解除と
残された音源のオクラ入りを決め込もうとした。


その音源はどうにかサミーの側に取り戻され、
MGMに話が持ち込まれる。


それがこのアルバム「ナウ」だったのだ。


ちなみに、そのアルバムのために
「キャンディ・マン」を録音することになったサミーは
こんな子供っぽい曲は
トイレに流してしまいたいと思うほど
嫌悪していたのだが、
何とそのあと、この曲は
彼の唯一のナンバー・ワン・ヒットになってしまう。


そのことに対し、
世間がすべてを決めるのだからと
正直に認めるサミーに
潔さと苦さの交じった人生を見た。


ぼくの大好きな曲に、
少し陰影が加わって、
思いはまた豊かになってゆく。(松永良平


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