Kurt Edelhagen and His Orchestra / A Toast to the Bands

Hi-Fi-Record2007-12-22

 昨晩、小原孝さんのリサイタルを聞きにいった。
 CDの最新作で取り組んでいる現代アメリカの作曲家、ウィリアム・ギロックの作品を中心に、そのほかチャイコフスキーの「くりみ割り人形」を小原さんのアレンジでピアノ組曲化したもの、そしてモーツァルトソナタなどを配したプログラムによる2時間のコンサートだった。
 ギロックの作品はとても楽しかったし、叙情と陰影に富んでいたものだったけれども、ぼくがものすごく心を魅かれたのは、冒頭に演奏された「スタニヤン・ストリート」とアンコールの「ボレロ」だった。
 ボレロのピアノ・アレンジって、始めて聞いたような気がする。あの「タン・タタタ・タン・タン」というリズムが、左手と右手の両方を用いながら間断なく演奏され、そこにメロディが乗る。左手と右手を交差させてメロディが繰り返され、ラベルのオーケストレーションを知って知らずか、繰り返されるメロディが色彩感豊かに広がるうちに、エネルギッシュなエンディングを迎える。見事な「ボレロ」だった。



 もうひとつ、冒頭に演奏された「スタニヤン・ストリート」は、小原さんのオリジナル。さらっとしたメロディが美しい。キラキラ光る木漏れ日のような装飾音が聞こえる。もしかして、タイトルの「スタニアン・ストリート」がサンフランシスコの街を走り抜ける道筋のことだとしたら、それは楽しいなあと思いながら聞いていた。あのストリートの坂道を、音符を用いて模したようなカスケイディングなフレーズが全面に配されていて、界隈の風景を思い浮かべることが出来るからだ。ちなみにロッド・マッケンが主宰したレーベルの名前も「スタニアン」という。このことは、おそらく小原さんはご存じないのではないかと思うが、いつの日か、お会いできる機会があったら、ぜひ伺ってみたいと思う。



 会場は、上野文化会館の小ホール。久しぶりだった。
 ロビーに入ると、ささやかなカフェが設けられていて、コーヒーやサンドイッチ、そしてビールやワインが売られていた。
 周りを見ると、ワイン片手に開演を待つ人の姿もちらほら。誘惑に負けたボクも、グラスワインを手にした。軽めの赤ワインだった。



 ワイングラスが描かれたジャケットのレコード。いや、これはブランデー・グラスかな。
 それにしてもこういうカタチの、こういう色合いのグラスだと、お酒にのまれない、のまれることの無いお酒が入っているのかも。
 いやいや、クルト・エーデルハーゲンの音楽に合わせて体を動かしていると、思わず気持ちよく酔いが廻ってしまうかもしれない。スカッとしたダンスミュージック。(大江田信)



Hi-Fi Record Store