Anita Kerr Singers アニタ・カー / It’s Anita Kerr Country

Hi-Fi-Record2008-01-30

 アニタ・カーがプロデュースした American Scene というグル−プの同名シングルがある。60年代の後半にドット・レーベルからリリースされた。
 爽やかに舞い上がる男女のコーラス。胸を突くメロディ。ソフト・ロックの極北と行ってもいいほどの名曲だ。数多くの曲を聴いた今でもそう思う。
 グループ名のAmerican Sceneは、アニタ・カー・シンガーズの変名で、このプロジェクトのみに用いられた名前だ、ずっとと思っていた。かつてモンド本にもそのように書いた記憶が有る。
 それがなんと、間違っていたのだ。


 このところメールでの交流を深めているミセス・アニタ・カーにAmerican Sceneの詳細ついて聞いてみたところ、すでにこの名前で活動していたグループと出会い、シングルを制作するに際して、そのままの名前を用いたのだと言う返信をもらった。アニタ・カー・シンガーズは、一切歌っていないのだという。
 これには驚いた。みずからの不明を恥じるとは、このことだ。
 かつての記述を信じてくださった方、ごめんなさい。


 そしてもうひとつ驚いたのだが、ミセス・アニタ・カーと父君のアレックス・グローブ氏は、彼らのアルバム制作をドット・レコードに推薦したという。そしてミセス・アニタ・カーの記憶では、確かアルバムがリリースされたのではないかという。それにしても自分たちが、スイスに移り住む前後の時期だったこともあり、詳しいことは覚えていないとも添えられていた。


 これでAmerican Sceneのアルバムを探す楽しみも増えるのかとも思うが、これだけアメリカでレコードを見ていて、今までただの一度もそうした名前を見たことが無い。まさか、リリースされておらず、ミセスの記憶違いのではないかと思うのだが、どうなのだろうか。



 「American Scene」も含め、ドット期のアニタ・カーの制作物は、いずれもとても興味深い。
 この「It's Anita Kerr Country」も楽しい一枚だ。RCA期のカントリー系作品とはおもむきが違う。
 ナッシュヴィルを離れてロスに移り住み今ひとつ視野を広げてから制作したカントリー作品だからか、とてもポップ。どこかしら突き抜けた楽しさがあるのだ。(大江田 信)


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