Jim Webb ジム・ウェッブ / Wrods And Music

Hi-Fi-Record2008-01-31

 独り立ちしたジム・ウェッブが借りたロスアンジェルスのアパートは、とにかく狭くてグランド・ピアノ一台を置くのが精一杯だった。夜になって眠りにつく時には、ピアノの真下に体全体を潜り込ませるようにしていた。作曲法について記した本の、自伝的な内容を語る一説にジムはそう書いている。


 なるほど、修業時代らしい話だなあと思って読んだ。部屋一杯にピアノを置いて、その下に潜り込んで寝るなんて。ガール・フレンドが尋ねて来た時なんて、どうやってもてなしたのだろう。


 このエピソードが好きで、ジム・ウェッブのレコードを見るたびに、思い返していた。それにしても、ふと気づいたのだけれども、いったいどうやってそんな部屋にグランド・ピアノを運び込んだのだろう。


 ジム・ウェッブのレコードで、始めて買ったのがこれだ。ジム・ウェッブが数々の大ヒットをものにした作家だなんて、まったく知らなかった頃のこと。吉祥寺にあった芽瑠璃堂というレコード店、コーラス好きだと日頃から公言していたボクに、とあるお客さんが教えてくれた。「P.F. Sloan」のコーラスがいいから、聞いてみたら。



 アルトとソプラノの女性の声と、ジムの声が混ざり合う美しさ。ユニセックスな雰囲気。いかにも西海岸ポップスの香りがすると思った。アカペラっぽさがいい。ウィリアム・トラッカウェイの「be the one」でも同様のコーラスの響きが楽しめる。


 それ以来、ずっとこういうコーラスが好きだ。じゃあほかにもいくらでも見つけられるかというと、そうでも無いのが不思議なのだが。(大江田信)



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