Louis Prima ルイ・プリマ / On Broadway

Hi-Fi-Record2008-03-25

60年代のフランク・シナトラ
レコーディングのときプレイバックなんか
聴いてなかったのではないか。


と、
あるひとが言っていた。


歌がいい加減な風に聞こえることがあると
暗に言っているのだ。


その判断はともかく、
それを裏付けするようなエピソードはある。


サミー・デイヴィス・ジュニアの自伝によれば、
60年代の彼は
シナトラ、ディーン・マーティンと3人で組んだ
通称「ラットパック」というトリオで
毎晩のようにホテルでショウを続けていた。


映画の撮影や
連日のホテル・ショウのため、
アルバムのレコーディングとなっても、
それに取りかかれるのは
もう明け方というありさま。


実際に
彼らにとって
レコーディングという行為は
そう多くの時間を割けるものではなかった。


ましてや、
パーティーの延長のようなショウが終わったあととあっては
しらふであることなんて望むべくもない。


これはあくまでサミーの例で、
シナトラも同じだったとは言えないが、
当時のショウビズ・スターたちの生き様を
想像するには興味深い事柄だと思う。


ホテルでのショウを
なりわいとして生きていたルイ・プリマ
おそらくレコーディングに関しては
同じようなことが言えたのだと思う。


ライヴ・レコーディングが多いのは
その方が活き活きとしているという面もあるだろうが、
何よりは
スタジオに入る時間がなかったからだ。


このアルバムの一曲目「メイム」でも
間奏のトランペット・ソロに入る直前、
彼は思いっきり咳き込んでしまっている。


それがそのまんま収録されてしまっているのは、
もうワンテイク録るヒマなんか無かったからだ。


それもまた
ショウビズのスターたちが時代を全力で生きた
証のひとつだと思うのだが。(松永良平


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