Cowboy Jazz カウボーイ・ジャズ / That’s What We Like About West

Hi-Fi-Record2008-03-26

 買付け時にレコードを山ほど手にしていて、気づくことのひとつ。ウエスタン・スイングのアルバムを、あまり見かけない。


 70年代以降に再評価を得られるようになってからリリースされたラジオ・トランスクリプション(ラジオ放送音源を元にしたアルバム)や、コンピレーション・アルバムは見かけるけれども、少なくとも10インチやいくつかの著名アーチストを除いて、50年代にリリースされたアルバムをあまり見ないように思う。


 ウエスタン・スイングの黄金期は、30年代半ばから40年代末のテキサスからオハイオあたり。今になってみると、数多くのアーチストが活動していた事がわかる。
 ウェスタン・スイングの黄金期は、同時にAMラジオ放送の黄金期とちょうど符合している。彼らは一様にラジオ放送出演に忙しかった。そして地方巡業や、またはボブ・ウィルスのように自ら設けたダンス・ホールでの演奏に忙しかった。いずれも生演奏本位の音楽活動だ。
 レコーディングされた音楽が刻印されたのは、30〜40年代当時の主流メディア、SPだった。50年代はSPからLPへの端境期。SPは、まだまだ生けるメディアだった。考えてみれば、ウエスタン・スイングのユーザーにとって、あえて50年代に始まったLPへの移行が必要なかったのかもしれない。


 ウエスタン・スイングを若い世代が楽しげに演奏することが始まるのは、60年代のそれも末。
 アスリープ・アット・ザ・ホイールはサンフランシスコで始まった。同じくサンフランシスコ・エリアで活躍を始めていたダン・ヒックスの音楽にもウエスタン・スイングの影響がうかがえる。
 こちらのカウボーイ・ジャズは東海岸のメリーランド出身だ。
 若い世代にとってのウエスタン・スイング・リヴァイバル。それって実は、ヒップな試みだったのではないかと思う。
 


 アメリカ音楽の地域伝統が、どんな風にして若い世代に受け継がれるか、どんな風に地域から外へ飛び火するのか、とても興味深いグッド・サンプルと思う。彼らの音楽が、楽しい事はもちろんの事なのだが。(大江田信)


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