Harpers Bizarre / Anything Goes / Malibu U
60年代中期から70年中期にかけて、ロス郊外のバーバンクに本拠を置くワーナー・ブラザーズからリリースされた作品のうち、プロデューサーとしてレニー・ワロンカーが関わったものをバーバンク・サウンドと呼ぶのが通例だ。
フィル・スペクターの下でアレンジャー修行をしたジャック・ニッチェから知恵を借りつつ、レニー・ワロンカーの廻りに集ったディレクター(ラス・タイトルマンやアンディ・ウィッカムなど)、アレンジャー(ヴァン・ダイク・パークスやニック・デカロなど)、作家(ジム・ウェッブやランディ・ニューマンなど)、プレイヤー(ライ・クーダーやレオン・ラッセルなど)たちは、様々なアーチストのレコードを作った。
この時期にワーナーからリリースされたアルバムには、アーチストそれぞれが個性を羽ばたかせつつ、全体にアメリカの音楽史を再訪する大いなる水脈が流れているように見受ける。
古いブロードウェイ・ソングやフォーク・ソングをとりあげるにもかかわらず、ルーツ志向をあからさまにはせず、さらっとしたポップに仕上げているのが、バーバンク・サウンドの特徴で、それは例えばハーパース・ビザール「Anything Goes」を聞くとよくわかる。
白人的なさらり感。これがポイント。多分、だけれども、ここではロックは目指されていない。
バーバンクに見られるような音楽制作集団は、チェット・アトキンスと中心にしてナッシュヴィルに集った例など、アメリカのポップス史にはいくつか見いだすことが出来る。
そのそれぞれの盛衰、生み出したもの、人々のつながり方、ヒット曲、全体としてのドラマなど、興味が募りこそすれ、絶えることが無い。
60年代後半のワーナー、そしてバーバンクのキー・マンは、レニー・ワロンカー。彼が何をやりたかったのか、自らをレニー・ワロンカーの視線と同化させながら、レコードの一枚一枚を見て探っていくと、とても面白いと思う。(大江田)