Clebanoff And His Orchestra / Lush, Latin And Bossa Nova Too!
アントニオ・カルロス・ジョビン、ジョアン・ジルベルト、ルイス・ボンファ、セルジオ・メンデス・セクステットなどが出演して、1962年11月にニューヨークのカーネギー・ホールで行われたボサノヴァ・フェスティヴァルは、ブラジル生まれのボサノヴァが初めてまとまった数のアーチストと共に海外で演奏されたコンサート。そして同時にブラジル国内を出て世界に広がっていくきかっけともなったシンボリックなイベントだ。
その翌年、1963年にいち早く発表された作品がこれ。見事なボサノヴァ・アルバム。
クラシック音楽を素養としつつ、その当時に主としてラジオの世界で働いていたクレバノフを見いだしたのがマーキュリーの制作主任をしていたデヴィッド・キャロルで、RCAからアルバムを発表して成功を収めていたジョーニ・メラクリーのと対抗するカタチで、売り出した。これが1955年のこと。
当初は甘美なストリングス音楽を発表していたクレバノフが、それから8年後にはこんなに時代の鼓動に呼応した音楽を制作していることに、まず驚く。
冒頭に収録された「Whispering Bossa Nova」の切れ味のいいメロディがいい。ほんのりとした哀調がにじむ。
曲はラロ・シフリン。アルゼンチンのブエノスアイレスに生まれパリに音楽を学んだのち、故国でディジー・ガレスピーに見いだされた新鋭のピアニストがアメリカにやって来たのが1958年。それから4年にも満たない時期の作品だ。作詞家の登録が無いことから、おそらくインストルメンタルとして書かれたもの、もしかするとこのアルバムのために用意された作品かもしれない。
クレバノフはロシア移民の二世だ。ロシアの血を引くクレバノフと、アルゼンチン生まれのラロ・シフリンが、ブラジルのボサノーヴァを演奏する。
アメリカらしいダイナミズムを感じさせる出会いだと思う。(大江田 信)