Marian McPartland マリアン・マクパーランド / After Dark

Hi-Fi-Record2008-05-19

ハイファイに
若い女性のお客さんが現れて、
普段は女性は近づかないようなコーナーを見ている。


熱心に見ている。


しばらくすると
彼女はカウンターにやってきて
「ハープのレコードはないですか?」と訊いてきた。


彼女は音大でクラシック・ハープを学び、
プロのハープ奏者を目指す
楽家の卵だった。


見た目は
コギャルというほどではないが、
そこそこ今風で、
そんな彼女がかしこまってハープを弾く図を
ついつい想像してしまった。


クラシック・ハープのレコードやCDは限られていて
ドロシー・アシュビーのような
ジャズ・ハーピストもいるが
入手できるものは決して多くはない。


確かその日は
リバティ・レコードから出ているハープのLPと
ビル・ウィザースのLPで
ドロシー・アシュビーが参加しているものを
彼女は買って帰ったと思う。


しばらくして
ふたたび彼女はやってきた。
留学が決まり、
もうすぐロンドンに行くのだという。


荷物になるのでレコードはもう買えない。
挨拶だけのために寄ってくれたのだった。


彼女が進む道がどれほど険しいのか
ぼくにはわからないが
いつか実を結んで
その音色をどこかで聴けたらいいと思う。


と言いながら、
名前も聞いてないんですが。


マリアン・マクパーランドの「アフター・ダーク」を聴いて
過去から未来の彼女を
想像することにする。(松永良平


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