Ed McCurdy エド・マッカーディ / Best Of Ed McCurdy
初めてタバコを吸ったのは、中学3年だったか。
その味に魅かれてというよりも、大人がタバコを吸っている様が、何ともカッコ良く見えてのこと。
例えばパリの街の裏町の暗がり。口にしていたタバコを足下に捨てて、ジャン・ギャバンがコートの襟を立てて歩き出すシーンに憧れたりした。実際に映画にそんなシーンがあったのかどうか、覚えていないけれども。
タバコを美味いと思うようになるには、随分と時間がかかった気がする。コーヒーにしても、ビールにしても、煎茶にしても、はじめから美味いと思う訳ではなくて、知らず知らずのうちに何となく折に触れて味わいにつれ、美味いと感じるようになった。それこそ嗜好品たるゆえんということか。
タバコを止めてずいぶんになる。それでも胸に深く吸い込んだ時の、あの味わいはまだまだ覚えている。美味かった。今一度、吸いたいなあと思うこともある。それもこんなジャケットを見ると。
実に美味そうにタバコを吹かしている横顔。人生の苦みを知っている知的な男が、くつろぐ。
エド・マッカーディは、50年代から活動を始めたフォーク第一世代。
反戦歌の古典「Last Night I Had A Strangest Dream」を書いた人だが、決して正義の味方だけの人ではない。
このジャケットを手に聞くにふさわしいたたずまいで、ちょっとしたフォーク・ブルースやランブリン・ソングのクラシックを、胸の内をのぞかせながら渋い声で歌っている。
タバコ・ジャケなんてジャンルがあったら、筆頭の一枚だと思う。(大江田信)