Count Basie カウント・ベイシー / Basie Rides Again
ベイシー、ベスパに乗る。
ベスパに乗っていた友だちがいた。
その友だちとは今でもよく会うが、
今はもうベスパには乗ってない。
だから過去形だ。
たまに二人乗りさせてもらうこともあり、
男性同士なので抱きつくわけにはいかず、
シートの下を手で支えていた。
ベスパについての一番の思い出は
とにかくエンジンがかからないこと。
何だか鉄のひものようなものを引いて
エンジンをかけていたような(超うろ覚え)。
かかりが悪いときは
手で押して勢いをつけていたような記憶だ。
そのうち、
修理に時間とお金がとてつもなくかかるという理由で
ベスパは売り払ったはずだ。
今はもうバイクにすら乗っていない。
その理由は明快。
ベスパに乗りたかったわけで
バイクに乗りたかったわけではないのだ。
おもちゃ売り場で泣きわめく子供のように
ぼくたちは「あれじゃなくちゃダメだ」と
そういうことにこだわり続けている。
「これでいいでしょ」と親が困って差し出すようなものでは
ふくれっ面になるだけ。
オトナの分別なんか知ったことか。
レコードもそれと似たようなものだ。
自分がそういう原理で今も生きていることに
ときどき途方にくれる。(松永良平)