The Delta Rhythm Boys デルタ・リズム・ボーイズ / Same

Hi-Fi-Record2008-06-28

 デルタ・リズム・ボーイズの音源は、なぜかCD化が進んでいない。かつてダスティン・ホフマン主演の映画「レインマン」(1988年)のサウンド・トラックに「ドライ・ボーンズ」が用いられていることをロードショーを見て知り、サントラCDを買ったことがある。それからしばらく、CDで聞ける彼らの音源はこれしかなかった。
 今もCD化が進んでいない状況に変わりがないようだ。単独アルバムのCDはみつからなかった。



 どうしてなのだろう。日本でのみ人気のあるバンドなのだろうか。
 デューク・エイセスのお手本であり、江利チエミとの共演ライヴ・アルバムを持つバンドとして、古くからのコーラスファンには、彼らのコーラスの響きは必ずと言っていいほど記憶されているはずだ。


 ジャズ・コーラスと呼ばれるほどには、難しいことをしない。とても品のいいコーラスと、5人のメンバーが揃うことで生まれる音域の広さを見事に芸にしている。人生の辛苦や楽しさをさらっと表現する、そんな身のこなしがいい。



 数ある「A列車で行こう」の中でも、彼らのヴァージョンが一番好きだ。A列車とは、ニュ−ヨークからハーレムに向かう地下鉄のこと。蒸気機関車や貨物列車といったイメージで演奏されるべき作品ではないことは確かなのだが、それにしてもデルタ・リズム・ボーイズ版には品のいい軽やかさがある。


 もともとはSP音源だったものを、LPに集成してまとめたアルバムがこれ。至芸が楽しめる。(大江田信)