Martin Yarbrough マーティン・ヤーブロー / Showcase
「このレコードいいなあ」とつぶやいたら、松永君に「昔は、このレコードに辛かったんですよぉ、大江田さん」と言われた。
思い当たる節がある。
ジャズのミュージシャンが絡んでいるフォークのレコードに、ぼくはどうも抵抗があった。ピュアなフォーク愛好家といえば聞こえがいいが、要するに偏狭だった。
眼をこらしてよく見れば、グリニッジ・ヴィレッジのミュージシャンのレコーディングに、ジャズのベーシストやドラマーが参加している例は、数多くみつかる。それなのにフォークらしいレコード、言い換えれば井の中の蛙のフォークを、フォークらしいものとして認めて来た。
要するに偏狭だったのだ。
それが、今になってみると、ジャズのミュージシャンが絡んでいるフォークのレコードがよくてよくて仕方が無い。
こういうレコードは、アメリカのレコード・ショップではジャズの棚には入っていない。もちろんポップやヴォーカルの棚にも入っていない。
フォークの棚をごそごそやっていると、出てくるのだ。
そんなことから、今再びフォークの棚を見るのが面白い。
いわゆるフォークらしくないフォークのレコードを見つけると、思わず触手が動く。
異色で素晴らしいフォークを見つける時の初歩的なキーワードのすべてが入っている、バッチリのレコードがこれだ。(大江田信)