Martin Yarbrough マーティン・ヤーブロー / Showcase

Hi-Fi-Record2008-07-10

 「このレコードいいなあ」とつぶやいたら、松永君に「昔は、このレコードに辛かったんですよぉ、大江田さん」と言われた。


 思い当たる節がある。
 ジャズのミュージシャンが絡んでいるフォークのレコードに、ぼくはどうも抵抗があった。ピュアなフォーク愛好家といえば聞こえがいいが、要するに偏狭だった。
 眼をこらしてよく見れば、グリニッジ・ヴィレッジのミュージシャンのレコーディングに、ジャズのベーシストやドラマーが参加している例は、数多くみつかる。それなのにフォークらしいレコード、言い換えれば井の中の蛙のフォークを、フォークらしいものとして認めて来た。
 要するに偏狭だったのだ。



 それが、今になってみると、ジャズのミュージシャンが絡んでいるフォークのレコードがよくてよくて仕方が無い。
 こういうレコードは、アメリカのレコード・ショップではジャズの棚には入っていない。もちろんポップやヴォーカルの棚にも入っていない。
 フォークの棚をごそごそやっていると、出てくるのだ。



 そんなことから、今再びフォークの棚を見るのが面白い。
 いわゆるフォークらしくないフォークのレコードを見つけると、思わず触手が動く。
 異色で素晴らしいフォークを見つける時の初歩的なキーワードのすべてが入っている、バッチリのレコードがこれだ。(大江田信)


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