Glen Campbell / Reunion : The Song Of Jimmy Webb

Hi-Fi-Record2008-07-19

 ジム・ウェッブが書いて、グレン・キャンベルが歌った「恋はフェニックス」は、カントリー・ソングに見られるご当地ソングのようでいて、ひと味もふた味も違う。
 「ぼくがフェニックスの街に付くころ、彼女は目覚めるだろう」と始まるこの歌には、いくつかの都市名が歌い込まれている。街の名前を追っていくと、主人公が西から東に向かって旅を始めていることがわかる。そして彼女が過ごすその日の様子と、彼女から離れて行く彼との関係が歌われる。
 アメリカ地図を思い浮かべながら聞くことが出来るリアリティを持っている人の耳には、より味わいを持って響くに違いない。


 ジム・ウェッブには、地名が歌い込まれる作品がまだある。「ウィチタ・ラインマン」も不思議な感触の歌だが、「ガルベストン」は、彼が書いた他の地名入りの歌とは大きく違う。


 主人公は、生まれ故郷のガルベストンを思い起こしている。
 目前で、砲弾が爆発(flashing)しているのを見つつ、手に持つ銃砲の手入れをしている。
 彼はガルベストンの街で自分の帰りを待っていてくれるだろう女の子のことを思う。そして「I am so afraid of dying」とつぶやく。
 ヒットした1969年当時、この歌を聴いたアメリカ人の誰もが、主人公をベトナム兵とわかったのだろう。



 グレン・キャンベルの歌声には、どこかしら楽観的な響きがあるからか、この詞を読んだ時にはとても驚いた。
 作品が書かれたのは1968年。この68年という時代が書かせた作品なのかもしれないと思うと同時に、今に置き換えて聞き取ることができることが悲しい。



 手元に「ガルベストン」を収録したグレン・キャンベルのアルバムが無いので、代わりにと言っては何だが、ジム・ウェッブとグレン・キャンベルのコンビが復活した作品を挙げておく。笑顔で並ぶ二人の写真がいい。(大江田 信)