John Hartford ジョン・ハートフォード / Aereo Plain

Hi-Fi-Record2008-07-31

 ジョン・ハートフォードの音楽が持っているリズム感は、独特のものだ。4ビートを基調にして、それにどこかしらベタッとしたシンコペーションしない16ビートがかぶさってくるというか。



 これは彼の弾くバンジョーの奏法から来ているのでないかと思う。
 バンジョーが人差し指でメロディを取るブルーグラスのそれではなくて、親指でメロディを取るフォークっぽい奏法なのだ。同じ3フィンガーなのだけれども、ダイナミックに躍動するブルーグラスの奏法に比べて、幾何学模様を描くようなロジカルな分散和音になっていて、しかもシンコペーションが際立たない。



 どうしてこんなことに思いが行ったのかというと、先日テレビでスティーヴ・ライヒの「18人の音楽家のための音楽」を聞きながら、これはどこかで既に聞いたことがある響きだと思い、ふとジョン・ハートフォードのバンジョーを思い出したからだ。
 ジョン・ハートフォードに、スティーヴ・ライヒがやっていたような音楽への関心があったとは聞かないけれども、遠く離れているところにあるはずの二人の音楽に、なんだか奇妙に通底するものを聞くような気がした。
 ジョンのバンジョーには、ミニマルな感じがある。繰り返す回遊性とか、戻るところの無いループとか、ルーツから離反する抽象性とか。
 一番の好例は、「ジェントル・オン・マイ・マインド」で演奏されるバンジョーかもしれない。グレン・キャンベルのヒット・ヴァージョンを聞き、オリジネーターがジョンだと知って聞いたところ、似ても似つかなかったことにとても驚いた。
 グレン・キャンベルが具象画だとしたら、ジョン・スチュワートのは奇妙に歪んだ抽象画だ。



 このアルバムに収録の「Holding」。ジョン・ハードフォードの独特のリズム感が鳴っている。(大江田信)


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