Michael Johnson マイケル・ジョンソン / There Is A Breeze
このアルバムにはAtco盤と、Sanskrit盤とがある。
Sanskritは、マイケル・ジョンソンのアルバムを都合3枚リリースしているミネアポリスのローカル・レーベルだ。
Atcoはご承知のようにAtlanticの傘下というか、傍系のメジャー・レーベルだ。
アメリカではマイナーでリリースされた作品の権利を、メジャーが買い取って今一度全国リリースし直して、ビジネスを大きく展開することがある。
今では日本でもそうして事例は見られる。
その伝で、このアルバムのオリジナルはSanskritで、それをAtcoが買い取ったのだろうと思い込んでいた。
それは間違いだった。
Atcoがリリースした作品を、Sanskritが買い取った。メジャーがリリースした作品を、マイナーが買い取っていたのだという。
マイケル・ジョンソンの周囲のスタッフにインタビューして、それが明らかになった。
余りにも売れなかったから、Atcoが手放す気になったらしい。
なるほどAtcoが手がけた作品と解ると、フリーデザインのクリス・デドリックや、フィル・ラモーンやピーター・ヤーローらニューヨークのスタッフが参加してプロデュースをしていたことの謎が解けるというもの。当時ミネアポリスに住んでいたマイケルを、数年前まで彼が暮らしていたニューヨークに連れて行ったのは、Atcoのスタッフの発想だったという。ローカル・レーベルでは、こうした発想は出てこないかもしれない。
アルバムB面の4曲目に、マイケルが一人でつま弾くガッド・ギターによる習作が収録されている。
ちょっと陰鬱なほどの押し込めた情感のある暗い曲で、これがアルバムの最終局面へと導く信号のような働きをすることになる。
聴きながら、北国ミネアポリスの冬を思う。長い時間を冬のあえかな日中の光と、真から暗い夜の中で過ごすとき、こんなギターの響きが友となるのだろうか。
マイケルはいまはナッシュヴィルに住んでいる。それでも、年に何回かはミネアポリスを訪れるという。
良い街だ、忘れることは出来ないと、もらったメールの末文に記してあった。(大江田信)