Ray Conniff / Another Somebody Done Somebody Wrong Song

Hi-Fi-Record2008-08-02

 携帯でメールを書くことがある。
 少しの言葉を打ち込むと、「つがなり候補」として、今打ち込んだ言葉につながる言葉が、画面にいくつか表示される。
 だいたいにおいて、この「つながり候補」に、自分の思い描くことばが無い。


 例えば「なぜか」と打つと、「です」「でした」「でしょ」と表示される。そんな文章ってあるのか?と思わず憤慨してしまう。ボクは「なぜか分りませんが」と打ちたいのだ。「なぜか」「でした」なんて、文章がありか?


 いずれにしてもボクが打とうと思う文章は、携帯に用意された文体や内容にそぐわないのだろう。
 それってまさか、ボクの打とうと思っている文章が、今の世の習いとそぐわないということかと、ふと思う。いや、いや、そんなはずがあるものかと思いつつ、つい「つながり候補」的文章とはどういうものか、すなわち世の習いの文章とはどういうものかを知るべく、画面を注視してしまうこともある。


 「つながり候補」とは、ある種の予定調和なのだろう。こうなるだろうと思っていると、その通りのものがやって来るということ。
 それって音楽に必要な場合があるのだと、かつてレコード会社で制作を職としている時に、先輩から教わった。


 レイ・コニフを聞いていると、ある種の予定調和の快感に酔いしれることになる。大団円の気持ちよさもある。
 こうなるだろうなあと思っているように、サウンドが描かれる。バッチリ「つながり候補」に満ちているのだ。(大江田信)



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