Billy Field ビリー・フィールド / Bad Habits
オーストラリアに家族旅行をしたときに、シドニーでレコードを買った。何時にどこでと約束して家族と別れ、レコードを探しに走った。約束の時間が目前になっても、レコードをめくる手を止められなかった。
もちろん約束の時間には遅れた。カフェで待っていた家族に、ひんしゅくをかった。
このときオーストラリアのポップ・ミュージックを概観している本を買って、その後にざっと読んだ。ビリー・フィールドは若くしてロック・ミュージックの世界で成功を得たのち、ブランクを経て再デビューしたミュージシャンであり、スタジオを経営する実業家だとわかった。
さらっとしたペーソスがにじむスインギーなボーカル・アルバム。40年代のスイング・ジャズを、80年代のポップ・ミュージックの感覚を交えつつ楽しんでいる。(これはアメリカ盤のジャケット)
ほんの数軒のレコード店巡りだったけれども、店頭に置かれたストックを手に取りレコードを探すことが、オーストラリアのポップミュージックをのぞき見ることにつながっている気がして、うれしかった。
やっぱりレコードは、レコード店で買うのが面白いと思った。
この10年間で、アメリカのレコード・ショップの環境は激変した。
今では厳しい環境に於かれていることは間違いないのだが、それでも元気な店は、いまでも元気だ。そうした店の主人たちは、レコードは店頭で売り買いするのが一番と思っている。
買う側にしてみると、いま自分の買おうとしているレコードが、どのような音楽的な歴史に位置しているのか、全体のどういった場所に位置しているのか、珍しいものかどうか、そうではないのか、そんなことを考えながらレコードをさわることができる。音楽の森で、適当に迷子になれるのがいい。店主や廻りの客に手助けを求めるのも悪くない。答えが用意されているレコードを買うのは、それはそれだけのことだ。レコードを探すうちに、レコードの一枚一枚がジグゾー・パズルのコマが揃った時のように、ふと一枚の絵のように見え始める。
これは個人のレコード・ディーラーの家にお邪魔して買い付ける場合も同様だ。
さて、ハイファイ・チームはこの夏の買付から帰って来たばかり。こうして見つけて来たレコードが、これからまたどっと入荷する。
手持ちで既に数百枚、そして数日内にはその数倍のレコードが届く。
どうぞお楽しみに。(大江田信)