The Mary Kaye Trio メアリー・ケイ・トリオ / For The Record
週刊文春の8月28日号で、小林信彦さんが「夏の終わりの曲」として、「ニューヨークの秋」など、この季節の印象的な曲を紹介している。
その一曲に「砂に書いたラヴレター」があった。
終わってしまった恋を描いた同曲のタイトルについて、「Love Letters」とはラブ・レター=手紙のことではなく、「Loveという文字たち」のことだろうと小林さんは指摘している。良く知られるタイトルは誤訳だというのだ。
読みながらはっとした。
主人公ふたりは「Love」という文字を書いたのだとするのが英語的に正しいし、物語としてもすんなり飲み込むことが出来るだろうとしている。
戦前にディック・ミネは、この歌を「恋の砂文字」との邦題で、自身で訳詞をしてカバーしたそうだ。
そういえばこれまで何の疑問も持たずに、海辺にラヴ・レターを書いた歌と思い込んでいた。なるほど、「砂文字」とは言い得て妙だ。
夏の終わり。この季節に僕が思い出すのは「セプテンバー・ソング」。特に今年は、このところ涼しい日が続くので気分はもう9月になったよう。
小林さんは「セプテンバー・ソング」は、ウォルター・ヒューストンの歌唱で決まりだという。
残念ながら、ウォルター版は聴いた事が無い。僕が好きなのはジェフ・リン版。このメアリー・ケイ・トリオの高速「セプテンバー・ソング」も、華やかな面白い味がする。(大江田信)