Mitch Greenhill And His Friends / Shepherd Of The Highways

Hi-Fi-Record2008-08-27

 アメリカのフォークのことを調べていると、ボストン/ケンブリッジのフォーク・シーンという言い方に出会う。
 この「ボストン/ケンブリッジ」というのが、最初はどういうことかよくわからなかった。ボストンは聴いたことがあるが、イギリスならいざ知らず、アメリカの「ケンブリッジ」が何処を指すのか、よくわからなかった。



 しばらくするうちに日本人の我々がボストンと言って思い浮かべているのは、要はボストン市とケンブリッジ市を併せた一帯の事なのだと分かってきた。
 ボストンとケンブリッジは、隣同士の町。新宿区にある新宿と代々木の関係というか、中野区の中野と東中野の関係というか。ジャズの専門学校として有名なバークレイ音楽院のほか、大学やカレッジの多い学生町だ。
 二つの町を隔てているのがチャールス・リバーで、チャールス川という名の通り確かに川には違いないのだが、大西洋にほど近いこの界隈では優に500メートル以上にもなる。天気のいい休日にもなると幾隻ものヨットが川面に浮かび、遊覧船が行き交うなど、まるで湖のような風景を織りなす。



 ボストン/ケンブリッジは、フォーク・ブームの始まった場所。
 ボストン大学の学生だったジョーン・バエズが、ブームの火付け役の一人となったとき、マネージャーを務めたのが、マニー・グリーンヒル。今日のコラムの主役、ミッチ・グリーンヒルの父親だ。



 ボストンらしいフォークが、そのままたっぷり収まっているレコードだ。楽しげに楽器を弾き、ルーツ・ミュージックを遊んでいる様子がいい。
 お勉強臭さが無く、ボヘミアンな気分があって。ヒップなアマチュアイズムが横溢していて、それでいて豊富な知識があることがうかがえて。
 ジャケットのイラストは、こちらもフォーク・ブルース・シンガーでもあったエリック・フォン・シュミット。



 ミッチは、その後、父の後を継いでマネージメントの職についた。
 ここで共演しているジェフ・マルダーのマネージメントをしていたこともある。(大江田信)



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