Judy Polan ジュディ・ポーラン / Judy Judy Judy
数年前に、ご本人にお会いした。
とあるレコード・ディーラー氏宅を訪ねたら、奥様が彼女だった。
今では地元の新聞に、美術だったか建築だったかちょっとよく覚えていないのだが、そうした記事を寄稿したり、雑誌に原稿を書いたりしているという。
おおらかで知的な風貌にして、ちょっとやそっとのことでは動じないアメリカのよきお母さん的なキャラクターの人だった。
たまには歌ったりすることはあるんですか?というこちらの質問には、こんな答えが返って来た。
「友人たちのパーティーで歌ったりするわね。楽しいわよ。そう、年に一回くらいはこの界隈をツアーして廻ることもある。車にギターを積んで、彼に運転してもらって、一週間くらいかけて街のクラブを廻るの。フォーク・シンガーって、決してリッチというわけじゃないもの、ね」。
そしてボクの方を見ながら、片目をつむるようにして、にこっと笑った。
それにしても彼女がここで歌っている「雨に唄えば」は、可愛らしい。
このところの大雨にいささか嫌気がさしている気分には、こんな「雨」だったらいいだろうなあと思わされる。うたを歌いたくなるような雨。
夫のディーラー氏は、彼女のファン・クラブの会長をしていたそうだ。会員の住所録を作って、会報を作って、レコードを作って、そして売っていたという。その住所録が、今の仕事のスタートを作った。彼の名前は、レコードの裏ジャケットにしっかり記されている。
一番の大ファンだったんですねと言うと、今でもそうさという顔をしながらディーラー氏はにっこりとうなずいた。(大江田信)