Glen Campbell グレン・キャンベル / Southern Nights

Hi-Fi-Record2008-11-05

アメリカにいて、
くしゃみをする。


ゔあくしゅん!


すると、
近くにいる誰かが合いの手を入れることが
ままある。


「ゴッブレシュ!」


それは一種の決まり文句で、
「ゴッド・ブレス・ユー」の発音を
軽く短くしたものだ。


間違っても
日本語で
「あなたに神の御加護を」
なんて訳してしまわないように。


では、どう訳したらいいのか考えてみると、
ここはさっぱりと御加護とやらを砕いて
「おだいじに!」
といった感じが似合っている。


「ゴッド」は「神」と必ずしもイコールではなく
「お」に込められる慈愛というか
誰しも持っている思いやりといった意味合いではないか。


同じような軽めの「ゴッド」には
「さあね」「どうだかね」という意味で使う
「ゴッド・ノウズ(あるいはフー・ノウズ)」がある。


これにしても
無責任に言っているわけではなく
気休めとしての心遣いが「ゴッド」によって
込められているように思う。


もちろん保守的な土地に入り込んでしまって
「神」イコール「宗教」ということを考えさせられる
シリアスな場面を体験することもなくはない。


だけど、
重く暗くなりすぎずに、
日本人が神社で柏手を無意識に打つように
アメリカ(あるいは西欧)に入り込んだ
軽みを帯びた「ゴッド」について考えてみることを
最近なんとなく意識している。


ブライアン・ウィルソンが歌った
(追記:正しくは弟カールに歌ってもらった)
「ゴッド・オンリー・ノウズ」については
「神」を直接に扱った
画期的かつ深遠なラヴソングだと解釈されることが多いけど、
実際アメリカに行ってみると、
彼らは日常生活でしょっちゅう「ゴッド」は使ってる。


好きな女の子の顔もちゃんと見られないくらい恥ずかしいから
そっぽを向くように
「きみのこと好きなのかもしれないな〜、ねえ神様〜」なんて
軽く迷い箸しているという解釈の方が
今のぼくにはすごくしっくりくるのだった。


直線直角の決意よりも
迷いの方が複雑で美しい。
「ペット・サウンズ」ってそういうアルバムだと思うから。


それにしても、
きみが好きすぎるから
神様に頼っちゃうなんて
どこにでもいる頼りない、
そして愛すべき男だぜ。


グレン・キャンベルの歌う「ゴッド・オンリー・ノウズ」にも
久々に針を落としてみる。
今までとは違って聞こえるかもしれない。わくわく。(松永良平


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