Buck Hammer バック・ハマー / The Discovery Of Buck Hammer
伝説のブギウギ・ピアニスト、
バック・ハマーを初めて音源として紹介したアルバム。
注意しないと
うっかりそう信じ込んでしまうだろう。
バック・ハマーは実在しない。
ピアニストで人気司会者で
作曲家で歌手でもある才人スティーヴ・アレンが
新たにレーベル・オーナーとしても活動すべく設立した
ハノーヴァー・レコードの第一弾として世に問うたのが
このアルバム。
それが
でっち上げだったのだ。
ゴキゲンなブギウギ・ピアノを弾いているのは
スティーヴ・アレン自身。
ただし、このアルバムでは裏の解説を見ても
そのことは一切明かされていない。
いったい何がしたかったのだろうと思うが、
結局、このひとは
「何がしたいのだろう」と思わせたかったのだと
納得することにしている。
納得ついでに言えば
そういう思いつきを
これだけのレベルで実現させてしまう
スティーヴ・アレンという人物は
並大抵ではないなと
呆れながら感心する次第。
ハノーヴァー・レコードは
約2年の活動期間で
あのナッティ・スクワーレルズのファーストをはじめ
約10枚のアルバムと
数十枚のシングルを残している。
未だにその全貌を記した資料はない。
洋書で昔出ていたという
彼の自伝を読んでみたら
もっと面白いことがわかるのだろうか。
多芸と余芸と至芸がいっしょくたになったようなこの才人について
ぼくらは50年近く素通りしてきたんだと
まるで最近のことのように
ぼくは少しあせったりしてしまうのだ。（松永良平）
