David Buskin デヴィッド・バスキン / He Used To Treat Her
よく見かけるロビン・バトーとのデュオ・アルバムのカバーに映る彼よりも、こちらの写真のほうがずっと柔和で親しみやすい。こういう表情も見せる人だったんだと、なんだかほっとしながらレコードを聴くと、音楽もまた親しみやすい。もちろん線の細いナイーヴなニュアンスにあふれた歌声なのだけれども。
よく見ると手の込んだジャケットだ。
ケロッグス・アンティックという名の店のショー・ウインドウに飾られているソファに座って、彼はこちらを向いて笑っている。
ウィンドウにはちょっと古めかしいタイプの帽子をかぶった品の良い女性の姿がかすかに見えていて、店の中に置かれた鏡には、彼女の横顔が映る。
ふたりは、この店で待ち合わせをしていたという設定? それとも街を歩く女性に彼が微笑みかけているというシチュエーション?
ウィンドウ越しに見える空の色が、やや重たい。秋の終わりか、冬の始まりの頃だろう。
ジャケット写真は、デヴィッド・ガー(David Gahr)によるもの。
彼の名前は、フォーク・ファンにはなじみ深いところだ。60年代のSing Outで盛んに写真を掲載していたし、ニューポート・フォークフェスティヴァルのライヴ・アルバムのカバーも撮っている。50年代から60年代にかけてのフォーク・シーンを丹念に追った「The Face Of Folk」というタイトルの名写真集もある。
久しぶりにデヴィッド・ガーの名前を見た。
70年代に入っても活動を続けていたと知り、少し嬉しい。(大江田信)