New Moon Swing Band / New Moon Swing Band

Hi-Fi-Record2009-03-12

 日本人の我々が思うところのジャズと、アメリカ人の思うところのジャズの間には、まだまだイメージの違いがあるような気がする。


 その昔、もう大昔の話だが、馬場こずえさんのパック・イン・ミュージック第2部のオープニング・テーマは、フォーク・シンガー、スティーヴ・グッドマンがアコギ一本をバックに痛快に歌うところの「嘘は罪」だった。この曲がジャズのスタンダードだったんだと分かったのは、アルバムを買って後のこと。初めて聴いた「嘘は罪」がスティーヴ版だったぼくは、いつまでたっても「嘘は罪」と聴くと、スティーヴ版を思い出す。ものの例えにもあるように。



 地下水のようにしてアメリカ音楽を流れるジャズが不意に顔を出すのは、ジャズばかりではない。スティーヴ・グッドマンのようにフォークの場合もあれば、もちろんポップ・ヴォーカルの場合もあれば、ダンス・バンド、ハワイアン、そしてブルーグラスの場合やカントリーの場合だってある。
 そういう音楽なのだという思ってジャズを捉え直せば、彼我の差はぐっと縮まると思うのだが、それにしてもこのジャケットを見て、ジャズ・コーラスのアルバムなのだと気づく人は決して多くないに違いない。未だにこのアルバム・カバー絵のココロが、ぼくにはよくわからない。



 手にしてみると演奏曲目には、ジャズのスタンダードが並んでいる。針を落とすと、スインギーでヒップな演奏が飛び出してビックリする。
 メンバー自身が、ギターとヴァイオリンとベースを弾きながら歌う。アルバム制作に際してブラスを加えたり、ピアノを加えたりしているが、それはゲストを迎えての事。彼らのみでライヴをする時は、ストリング・バンド・タイプのジャズを演奏しているのだろう。アルバムの裏写真にカフェの文字と共に映るメンバー写真が示すように、ピアノが常設されていないスペースでも演奏出来るジャズ・バンドに違いない。



 シカゴの郊外街で制作されたジャズ・アルバム。一組に夫婦と、男女という4人組。日曜音楽家というには本格的で。プロ中のプロというにはカジュアルで。
 こういう音楽が流れているレストランが東京のどこかにあったら、ぜひ行ってみたい。(大江田信)