The Sandpipers サンドパイパース / The Sandpipers

Hi-Fi-Record2009-07-16

 暑くなりました。
 夏、ですね。


 この季節に音楽で涼を得る際の定番中の定番といえば、クイ・リーの「I'll Remember You」。ハワイアンとボサノヴァの幸せな結婚、フラノーヴァを代表する一曲であり、そして60年代に誕生したハワイアンとしてもっとも多くメインランドのシンガーたちに歌われた曲でもあります。


 で、思い出したのが、こちらのサンドパイパースのヴァージョン。まるでブラジル生まれのボサノーヴァのような顔をして、なんの違和感も無くアルバムに収まっています。


 この曲、「I'll remember you」と、「いつの日かあたなを思い出すだろう」と愛する異性に歌いかける美しいバラードですが、どうもくり返し聞いているうちに、彼が歌いかけているのは、目前の人ではないかという風に思い始めます。
 幸せのさなかにいる二人は、ほどなく別れの日を迎えなければならず、その定めを心に意識して「I'll remember you」という語り合っているように聞こえ始めてしまうのです。
 あなたの腕のもとに戻りたいと歌う「To your arms some day、I'll return to stay 'til then」というフレーズが、悲しみを誘います。
 それがこの歌のポイントではないかと思ってしまいます。


 話はサンドパイパースに戻ります。
 サンドパイパーズのコーラスには、たびたび女性シンガーの声が加わっています。3人のハーモニーに加わるというよりも、メロディの周囲をオブリガートのようにして、浮遊する独自の表現をします。彼女のソロ・ボーカルも聞かれる曲もあります。にもかかわらずアルバム・クレジットには、彼女の名前が記されていません。
 最近になって解ってきたことですが、彼女はパメラ・ラムシャーという女性だった、そう明らかにする資料も見受けますし、彼女がライヴ・ツアーに加わっていたとする記述も見いだすことが出来ます。
 残念なことに確証を持てるまでには至っていないようですが、それにしてもちょっとミステリアスだなあと興味を惹かれます。(大江田 信)



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