小西康陽 / これからの人生。

Hi-Fi-Record2009-12-25

The Cool School 104 メリー・クリスマス


アメリカのレコード屋さんで
初めて「メリー・クリスマス!」と声をかけられたのは
クリスマス・シーズンではなかった。


個人的な旅行で
レコードを買いすぎたとき
箱に入れて日本に送ることを思いつき、
近くにあったタワーレコードに出かけた。


レコード用の箱が買いたいのだがと訊ねると
売り物としては在庫していないが
そのあたりに転がっているのを持っていけばよいと教えられた。


レコードを横に詰めるタイプの箱で
20枚ほど入りそうなちょうどよいのがあったので、
それを2、3個もらって帰ることにした。


教えてくれた店員に
ありがとうのつもりで手を振ったら
「メリー・クリスマス!」と声をかけられたのだった。


あれ?
おかしいな。
まだハロウィンも来ていないのに「メリー・クリスマス」?


あとになってわかったのだが、
それは「おめでたいやつだな、おまえは」という意味の
軽いジョークなのだった。


まあ、あのときの調子を思い出せば
小馬鹿にされたという感じでもあったかな。


買付の仕事をするようになってからも
何度か季節外れの「メリー・クリスマス」を
ちょうだいしている。


特に
ポップ・ヴォーカリスト
イージーリスニングのアルバムを
意識してたくさん買い始めたころには多かったなあ、
「メリー・クリスマス」が。


でもそのころにはもうわかっていたのだ。
彼らの考える「おめでたいレコード」の中に
彼らがまだ気がついていない
才能と労働力と情熱がどれほど埋もれているかを。


だからぼくは
「メリー・クリスマス」を
額面通りに受け取る。
一年中。


それがぼくたちにとっての
最大の褒め言葉であると今でも信じている。(この項おわり)


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みなさまの
よい年越しと
よい新年をいろどる
素敵な音の便りになることを願って。(松永良平


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