Richard Barbary リチャード・バーバリー / Soul Machine

Hi-Fi-Record2010-03-29

The Cool School 140 街は生きている


買付を長い間やっていると
当然ながら
レコード屋の閉店をいくつも目にする。


大好きな街だったのに
そこにあったお店がなくなってしまったために
もうすっかり行かなくなってしまったところも多い。


そんなときに
悔し紛れに
「あの街も死んだなー」なんて
口悪しきことを言ったりする。


だが
最近になって
その常識というか偏見が
くつがえされるパターンが増えてきた。


若くてビジネスに熱心な連中が街に乗り込んで
新しいセンスで店を始めて
それが結構にぎわっているのだ。


考えてみれば
ときどきその街を訪れるだけのぼくたちは
その街のレコード景気を
手っ取り早く定点観測できる場所として
レコード屋を利用していただけなのかもしれない。


レコード屋のない街からは
レコードを聴いてきたひとたちの歴史も消えるだなんて
そんな決めつけは乱暴もいいところだ。


死んだように見える街も
どこかで必ず生きている部分があって、
よろこびの声をあげるチャンスをうかがっているだけなのだと思う。


こないだのレコード・ショーであった
ある店の主人が
南部に支店を出すという話をしてくれた。


「へえー!」と思わず声を出してしまった。


その街の名は
もう二度とレコード的に復活することはないだろうと
世界中の誰もが考えていたところだったからだ。


「勝算はある」と彼は言い切った。


たぶん彼には
よくわかっているのだ。


その街に根付いた音楽は
そう簡単には死んだりしないということが。(この項おわり)


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アメリカの街の構成は
とてもはっきりしている。


この道を超えれば
そこから先は庭が広い豪邸地域。
ここから手前は
収入の少ないひとたちが
身を寄せ合って暮らすさびしい地域。


日本のように
いろんな環境や世帯が混ざり合ったりしない。
おのずと区分けがはっきりしている。


ジョニー・リヴァースが歌って大ヒットした
「プア・サイド・オブ・タウン」は
センチメンタルなメロディが胸に迫る曲だが、
アメリカで聴くことで
歌の背景にあるリアリティがはっきりして
昔よりもずっと好きになった曲だ。


CTI初期にアルバムを残すリチャード・バーバリーのヴァージョンも
とてもいい。


DJを始めたころにかけて
誰かに褒められた記憶がある。
春霞の季節にも
よく似合う。(松永良平


試聴はこちらから。