The San Francisco Hubcaps / Percussion Party
The Cool School 197 史上最大のディスカウント その2
西海岸のとある店。
規模はそれなりに大きくて
お店の商品のほとんどは中古レコードで
ロック、ジャズ、クラシック、その他ジャンルも充実している。
これでもうちょっと
コンディションが良くて
値段もすこしだけ安ければいいんだがというところが
どうも癪にさわる店で
店主がぼくたちに出した条件。
それは
ある金額をクリアすれば
買ったレコードのすべてを半額にするというものだった。
その約束から一年、
ぼくたちは店の門を叩いた。
店主はもちろん約束を覚えていて
ぼくたちの気合に満ちた顔に気圧されて
すこしあとずさりしながら「よく来たな」と言った……かどうかは
こっちの思い込みかもしれないけれど、
とにかく闘いのゴングは鳴った。
えっさ、えっさ、
半額、半額♪
ちょっと高いな、でも半額、
ちょっと盤が今イチだな、でも半額♪
歌でもうたいだす勢いで
さくさくとレコードを積み上げる。
約百ドルごとにレコードをまとめて
トータルで今いくら買っているのかをわかりやすくした。
出足は快調という感じだ。
こういう条件なので
いつもならパスしているような
ちょっとお店で売るには趣味が違うかなとか
良い曲もあるけど全体は微妙かもなと思えるレコードでも
審査をパスさせた。
条件を過剰に甘くするのは危険だけど
実はそういう自分たちでも売れるかどうか予期出来ない商品って
結構新たなお客さんをつかむ鍵になったりもするのだ。
開始から3時間ほど経過。
途中経過を数える。
「大江田さん、
あと5分の1くらいです」
「おー、そんなとこまで行った?」
しかし
すでに見るべきところはあらかた見終わっていて
ここから先は見落としの再チェックなどでかせぐ段階に来ていた。
砂金を見逃さないよう神経を集中するので
疲労度も増してくる。
まるで山登りと一緒だと思った。
きついのは頂上が見えてからだ。(この項つづく)
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このレコードは今まで何回か目にしていた。
今回初めて買うことにしたのは
何かの拍子にジャケのイラストをまざまざと見たから。
なんだこれ?
メンバー全員女装してるぜ!
きっとキテレツなレコードに違いないとあたりをつけ
嬉々としてレジに持ち込んだ。
帰国後、
あらためて音を聴いた。
予想通り
かちゃかちゃかんかんとにぎやかで
奇想天外なサウンドだった。
しかし
ひとつだけ勘違いしていたことがある。
このひとたち
女装した男性ミュージシャンじゃなくて
全員女性だったんだ!
あ〜すいません。(松永良平)